【鹿児島市】コミュニティバス利用状況等調査業務

【鹿児島市】コミュニティバス利用状況等調査業務

鹿児島市 企画財政局 企画部 交通政策課 児玉博史課長 (右)
SWAT Mobility Japan株式会社 代表取締役 末廣将志 (左)

鹿児島市が運行するコミュニティバス「あいばす」は、利用者数の少ない便があるなどの課題があることから、利用状況等を分析し、地域の持続可能な交通手段となるように調査検討を行う必要がありました。SWAT Mobility Japanは、人口分布や人流データ等も活用しながら、鹿児島市11地域で平日90系統、土曜54系統を運行している「あいばす」の乗降データを元に利用状況の可視化・分析を実施しました。分析の結果、全地域の停留所1,216のうち、利用がない停留所が147(12%)、利用が0人より多く1人未満の停留所が1,034(85%)あり、多くの停留所において、利用者が少ないことが分かりました。(年間平均利用者数/便)また、1 年間一度も利用されていない停留所が10 以上ある地域が6 地域もあり、このうち、利用されていない停留所の割合が最も高い地域では、23%の停留所が一度も利用されていないことが分かりました。結論として、一部区間の廃止やオンデマンド交通への転換など、運行の効率化に向けて改善の余地がある地域が多いことが分かりました。

乗降データ分析例:

・乗車が多い停留所

・停留所毎の利用者数(乗車+降車)

・停留所間の利用者数

・人流分析

鹿児島市 交通政策課へのインタビュー

― 「あいばす」が抱える課題を具体的に教えてください。
令和4年度の「あいばす」利用者は1便当たり全地域平均3.3人、各地域1.7人~5.8人と非常に少ないです。それにより、1人当たりの補助金額が高く、令和4年度の「あいばす」の1人当たりの補助金額は全地域平均1,435円、各地域680円~3,565円となっています。更に、運転者の高齢化による退職者の増加や新規採用者の減少で年々運転者不足が深刻化していることや車両の老朽化、運行ルートの長大化といった問題を抱えています。

― 「あいばす」利用状況の可視化・分析によって、新たな発見はありましたか?
これまでに、地域別や便毎の利用者数を元に各地域の利用状況を把握してきましたが、停留所別の利用状況などはデータとして把握できておりませんでした。令和4年度には、バスロケーションシステムとあわせて乗降センサを導入したことで乗降データの取得が可能となり、今回、そのデータを可視化していただいたことで、停留所別や時間帯別の利用状況が明らかになったほか、分析の結果、停留所数や運行距離と利用者数には相関がないことが分かり、日常生活の足として利用していただいている方が一定数いることなどについて、データを根拠に実感することができました。

―可視化・分析結果を元に、「あいばす」をどのように改善していく予定ですか?
今回の調査は、「あいばす」の運行ルート・ダイヤの見直しや地域の実情に応じた最適な交通手段等を検討するための基礎的なものであり、今後は、「あいばす」の利用経験の有無を問わず、地域住民の意向調査等を実施し、住民の移動特性や需要についても把握・分析したいと考えています。そのうえで、「あいばす」については、見直し対象路線を抽出し、運行経路、運行時間帯、運賃の見直し等を合わせて検討するほか、「あいばす」及び乗合タクシー、AIオンデマンド交通等の交通手段の中から、各地域の特性を踏まえた改編案を検討していきたいと考えています。

― 可視化・分析に対する有識者や関係者の反応はいかがでしたか?
有識者からは、人流データの有効的な活用方法や分析の切り口についてのご意見をいただきました。可視化により利用状況等を直感的にとらえることができるようになり、利用者や地域住民の方々にとっても、現状等を知っていただくための有効な資料になると期待しています。

― 今後、SWAT Mobilityと一緒に取り組みたいことはありますか?
今回の調査を通し、利用状況等を可視化・分析することの大切さを改めて認識しました。令和6年度も引き続き、持続可能な交通手段の調査検討を実施し、各地域の見直し方針素案を作成していきたいと考えています。